chayarokurokuroの雑記ブログ

読書記録、書評、歴史(九州倭国説)など

大塚初重『装飾古墳の世界をさぐる』祥伝社

著者は明治大学名誉教授で日本考古学協会会長などをされた先生で、Wikipediaで調べたら現在93歳でご健在とのこと。
初版が平成26年古事記日本書紀に基づいたおかしな思想の反動で戦後の歴史学会は大変活気があったそうですが、昨今では…という感じで衰退を残念がっておられます。今は更に予算切られたりして「ついに我が校も日本史専任の学者が居なくなった」とツイートしてる大学教授もいたりして、残念な状況のようで。
装飾古墳はわからない事だらけだと書いてあり、この本の後にどれ程学問の進展があったのかと思います。あまり無さそう。

本の内容としてはテーマが装飾古墳なので主に九州の古墳、時代はだいたい6世紀以降になりますか。装飾古墳の写真を見れば分かりますけど、まぁびっくりするほどド派手でカラフル。古代史は日本の中だけで見てもさっぱり分からんので、視野を広くして偏見を取っ払って世界史的に見る必要があると思いますけども、中には中東のイスラム建築のモザイク様式みたいなのもあるし、エジプトのピラミッドにあるような図柄もある、騎馬民族風のピエロみたいな格好した人物も描かれていたり、石材の使い方も彫刻が入っていたりどうやって運んだんだろうと思うようなバカデカい岩を使っていたり建築技術は結構高度で妄想が膨らんで面白い。絵は小学生の落書きみたいですが(笑)。フリーハンドで描いてあって、太陽か月か鏡を示してるのではないかと推測されている円文は中心にキズが付いているのでコンパスが使われたらしいのだが、色の付け方が円をはみ出したりして結構適当ですと。
九州の縄文時代土偶も東北のと比べていい加減に作っていると大宰府九州国立博物館で比較展示されていたが…九州人はいい加減ということで。

全国的に九州の装飾古墳のような、彫刻や壁画の図柄や模様、色のついたものの分布が関東や東北太平洋側など偏在しておるということでございまして、やはりこの関係性は無視できないと、以前行きました熊本県の装飾古墳館でも言われていたし、この本でもそう述べられています。
ところで、中国で作られた世界地図で500年ほど前の物でも九州を倭、本州を日本という感じで別けて描いてあり、中国正史でも小国だった大倭が倭を飲み込んだとしていて、また倭国は筑紫城でずっと続いてきたのだと新唐書で言っている等の理由も含めて九州倭国説の根拠としているものがあり、個人的に賛成している。記紀倭国の存在を隠蔽した。まぁ別の国なのでと割り切れば書く理由もないかとも思うが、九州内の出来事も書いているので意図的作為的に削除したはずだ。蘇我馬子蝦夷の家と一緒に焼失したという言い逃れは誤魔化しですよ! (◎-◎;)
古事記日本書紀に出てくる人物名に「武」が着くのは九州か倭国の人物なのではないかと最近思っている。で、ワカタケル=雄略も倭国のお偉いさんか、下手すると雄略と百済の蓋鹵王は同一人物じゃないか?、埼玉の稲荷山古墳と熊本の江田船山古墳の鉄剣銘文の「獲なんとか鹵」大王は蓋鹵王を示しているのではないかとすら思わないこともない。後々、百済のために半島まで行って唐の捕虜になるぐらい九州人の朝鮮との関係や入れ込み具合がただならん感じですし。
と、どうでもいい個人的妄想は置いといて、著者自らは文献史学に疎いとしながらも九州と東北の装飾古墳の繋がりは無視できないだろうと何度も書いている。探れってことよ。

古墳の発掘は、昭和の場合は建設や土地開発をやっている時に偶然見つかって大学や教育委員会に連絡が入り、調査が始まるというのがほとんどだそうですが、奈良の高松塚古墳茨城県虎塚古墳は初めから調査目的で調査された数少ない古墳だそう。全国でもこの2例ぐらいじゃないかと。共に有名な装飾古墳。
著者はこの虎塚古墳を初めから調査された。茨城県日立市で古墳でもない所から埴輪が出たというので、他の明大の先生と実際に現場に行ったら確かに古墳でもない所から埴輪がたくさん出る。斜面に焼けたような跡もある。埴輪の窯の跡ではないかと直感し、勝田市と明大で調査した。て遺跡とわかる。それで勝田市史編纂の依頼を受ける。で、ある時近辺の地主のお爺ちゃんから「ウチの土地にある古墳を掘ってよ」と依頼されて虎塚古墳の発掘調査をする事になるのですが、石室入り口にガチッとはめられた石を外して、奥にある壁面の装飾が目に飛び込んで来た瞬間の興奮たるや(笑) 激アツでしょ激アツ。他人の墓を暴いて熱いとか言うのもちょっとアレだけどワラ
副葬品はあまり大した物は無かったそうです。古墳内部には鬼門の方角にあたる東北方向のコーナーに鞘から抜いた刀を立て掛けてある場合がよくあるという。魔除けの意味が込められているのではとされているようだが、虎塚古墳ではそれがない代わりに東北方向の壁に刀が斜めに描かれている。調査のエピソードが書いてあるので興味があれば是非。

装飾古墳の紋様にしても建造様式にしても、暗号解くみたいで面白いし、データベースをガンガン晒して語らせれば良いのにねぇ。盛り上がるでしょ、地域の掘り起こしとかで使える。東京のコンサルタント使ってゆるキャラだとか作らせて散財するよりよっぽど面白いし役立つ。