chayarokurokuroの雑記ブログ

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武鑓行雄『インド・シフト』PHP

2018年3月6日第一刷発行
著者の武鑓行雄(たけやりゆきお)氏は元ソニーインディアソフトウェアセンター社長。


欧米をはじめとした先進国やその他のトップ企業が大規模な研究開発拠点を置くインドのバンガロールの状況について。

MicrosoftGoogleといったIT企業の現在の社長はインド人だったりしますが、バンガロールシリコンバレーの連携でIT企業やサービスのイノベーションが次々と出て来ている。トレンドが先進国から新興国に伝わるといった流れから、逆にリバース・イノベーションという形で逆流してきている。2020年には開発者数でアメリカのシリコンバレーを追い抜くとある。ということは既に抜いているのか。米国企業各社はアメリカ勤務よりインドの方が社員数が多かったりする。もはやインドは下流工程のオフショア拠点ではなくなっており、上流工程からこなしていると。

そのようなことが可能な理由としては、インド工科大など入試競争倍率が100倍を超す世界でも最難関大学の超優秀で豊富な人材と多様性のある人々、英語が出来ること、先進国にあるような整ったインフラがない為に逆に新しい視点からの発想が生まれる素地があることなど。
インドでは毎年理工系で100万人が卒業。そのうち20万人がIT企業で技術者になるそう。インド全体のIT技術者数は200万人を超える。年収は初任給で100万円に届かないがGoogleなんかの研究職に就くと200万円ほどとか。トップレベルですと米国本社へ引き抜きで一気に桁が増えたりする。
一方日本は大学卒業者全体で55万人、そのうち理工系が10万人。IT系に就職するのは半分もないか。



本書にはインド発の企業がいろいろ紹介されていますが、特に驚いたのはp152「世界最大のビッグデータ専業会社ミューシグマ」。アメリカ登記だが本拠地はバンガロール。リテールビジネスやロジスティクスなど10のビジネス分野のビッグデータ分析に基づくコンサルティングを行っているユニコーン企業で、2004年にディーラジ・ラジャラム氏が創業。全米売上上位500社で構成されるフォーチュン500企業のうち140社がカスタマー。2014-15年時点で従業員数3500人。驚くことに、平均年齢が25歳以下。長年ビッグデータ分析をやってきた専門家が分析しているのではなく、専門知識のない若者が同社が独自開発した方法論とツールで行っているという。2014年は新卒を900名採用したそうだが、数ヵ月の学習とトレーニングだけで分析業務に携わることになる、のだと。

ディーラジ氏「ナレッジ(knowledge)は意味がない。重要なのはラーニング(学習)とマスマティックス(数学)だ。」と述べている。

データ分析者を育てるのは時間が掛かると言われているようですが、これはビックリじゃないですか。分析をお願いすると意外な新しい発見が出てくるのだと。

また、カスタマーはベンダーに自社データを提供したがらないが、そこでカスタマーが自分たちで分析できるよう、希望すればバンガロールで数ヵ月間トレーニングをつけてくれることもやっていると。分析業務のコスト面では若者人材なのでかなり競争力もあると。
分析力を付けさせる教育機関が分析も請け負っている感じですかね。

そのエネルギッシュなインドですが、日本企業は他国と比較してあまり進出してないと。韓国のサムスンなども結構ゴリゴリやっているようだ。

総務省がDX(デジタルトランスフォーメーション)が云々と言っていますが、ITは業務の効率化はすれども雇用を生まないとか一部に集中してしまうとかプログラマ35歳定年説とか、ITの業務内容も誰でも直ぐにやれることではないし、先進国で同じようにやれるんだろうか。ひたすら雇用が減っていくような…かといって産業空洞化で物づくりで勝負というのも最早ない…波に飲み込まれながら個人としてどう生きるか…