平将門が「新皇」を名乗り出てくる西暦900年代と、卑弥呼の登場する社会情勢は似ているのではなかろうか。
日本国=大和朝廷が誕生するのは大宝元年(701年)。『旧唐書』で「あんた誰?どこの国?日本?知らんなぁ」と言われながら初めて外交したのがその直後。発足当時の大和朝廷は唐・新羅の傀儡政権であっただろう。
900年代に入り、唐や新羅は立て続けに滅亡するが、唐・新羅の傀儡としての大和朝廷は拠り所を失った形だ。その状況は、漢帝国(後漢)がガタつき、その後ろ楯が揺らだ為に倭国王の権威も失墜、その結果倭国大乱が起こってやがて卑弥呼が共立される、という状況とかぶる。
平将門が「新皇」と名乗り出て来たり、藤原純友が乱を起こした理由は、唐・新羅滅亡がその傀儡の大和朝廷の権威を低下させたからではなかろうか。
ってな風なことを考えているそぶりをしながら、今回もレザークラフトの投稿。
ヌメ革のスクラッチ加工の実験
タンニン鞣しのヌメ革を使って、人気のイタリアンレザー「プエブロ(バダラッシカルロ社)」「マヤ(イルポンテ社)」「ヴィヴィド、正式名マルゴー(ヴィルジリオ・コンツェリア・アルティジアナ社)」など吟スリ加工(スクラッチ加工)した革を真似て作ってみます。
用意するもの
右から
- 真鍮ブラシ
- 革染料スピラン(アルコール染料)
- 柿渋(色止めの実験用)
- ヌメ革の端切れ
- 紙ヤスリか耐水ペーパーの120番
真鍮ブラシは無ければ特に必要ない。紙ヤスリは120番がちょうど良い。80番だと粗すぎ、240番だと細かすぎる感じ。これで革の吟面をヤスる。クレイジー(^q^)
染料は色の落ちにくいスピランやプロダイ・レザーダイなどアルコール染料が良さげ。
柿渋は酸化すると皮膜ができ、防水効果を発揮する。「スエードの色止めに柿渋を使う」と呟いている人が居たので実験する。
柿渋について
柿渋染めされた財布などがあります。大抵は刷毛あとを残し木材のような雰囲気を出してあったりします。塗った時は色は着きませんが、柿タンニンが酸化することにより次第に変色。ベタ塗りすれば全体的に茶色から焦げ茶にエイジングする。
柿渋はホームセンターで1500円ほどで売っています。大抵はニスが置いてある付近にある。
左は今回使用したターナー色彩の「無臭柿渋」。3年以上熟成したものを使っているらしい。
柿渋は、熟していない青柿を粉砕・圧搾して取った汁を1年以上発酵熟成させたもので、これを木材や紙などに塗り天日干しの工程を重ねると防水・防虫・防菌・防腐などの効果。日本では古来から柱や垣根、和傘、伊勢型紙(ステンシル版画の要領で和服生地の染付けをする型紙)、即神仏(ミイラ)作りなどに使われてきた天然塗料です。古い町並みを遺した和風建築の赤や黒い垣根や壁板には、柿渋にベンガラ(鉄・赤錆サビ)や墨を混ぜたのが塗ってあったりする。
効果に関しては合成塗料には及ばないが、天然塗料でシックハウス症候群も起こさないということで近年は見直されて来ているようです。
柿渋の欠点は、ヒドイ臭いがすること。含まれる酢酸や酪酸が腐った銀杏のような匂いを発して強烈。無臭柿渋はこれ等の成分を除去したもので全然臭わない。
通常の柿渋では匂いは約ひと月以内には収まる。
また、使い残しは数ヶ月でゼリー状に固まって使えなくなるので、試しに使う場合は少量での購入が良い。
スクラッチ加工
- 以前にスクラッチ加工したもの
右は紙ヤスリの80番で縦横に削ってある。左の緑は120番で円を描くように。
色止めしたいが、革用のラッカー、アクリル、ウレタン、ワックスなどを使うと起毛自体が固まってアノ感触にならないので、靴用のフッ素系防水スプレーをしてみた。ズボンのお尻のポケットに入れっぱなしにしているが、これでも起毛が固まって麻袋のような触感がいつまでも残っている。
スエード・ヌバック専用の色止めスプレーを使うとマシかもしれないが実験していない。誰かよろしく頼む🙏
- ヌメ革の端切れを用意
姫路のフルタンニン生成り
- ヤスリ掛け
やり過ぎ注意。ヤスった後は削りカスをブラシや刷毛でキレイに払い落とすこと。この後染色するが、削りカスがあるとそれが色移りの原因になる。
- ヤスった吟面にオイルを塗る
お、スクラッチレザーな雰囲気♪
アルコール染料による染色前にはオイルを塗る。水を塗るとムラになりやすい(気がする)。
- 染色の準備品
スピランの空色を薄めて塗ることにする。
真ん中は希釈用のアルコールで、エタノール95%。500ml入りで税込770円。消毒用75%エタノールが使えそうならコスト的に代用したいが…。燃料用は50%くらいメタノールが入っていて体に悪そうだし止めておこ。
- 染料を薄めて
- 染色
アルコール染料はすぐ乾く。5~10分程度扇風機の前に置いておけば…。
- 色移りの確認
ティッシュで強くこすってみる
当たり前に色移りする。
スピランは水性のバチックやクラフト染料などより色移りしにくいが、強くこすると色移りする。今回のはスクラッチしているので更に色移りしやすい。
柿渋で色止め・防水効果の実験
ターナー色彩の無臭柿渋
柿渋の容器に使用方法で書いてあると思うが、水で2倍以上に薄めて使う。濃いまま革に塗ると厚い皮膜ができて?ひび割れする。というかした。塗ったかどうかわからないぐらいでよい。色は着かない。数日で酸化して次第に茶色くなっていく。
上の写真の内蓋に柿渋の茶色が着いている。既に液体ではなく固形。拭いても取れない。厚塗りは避けます。塗料は全般的に厚塗り厳禁。
- 筆で塗った
2倍以上に薄め、筆で塗った。
- スエード加工にも塗ってみる
裏地用の羊革の床面が起毛になっている。これにも塗った。若干スエードの滑らかな感触が失われた。使わない方が良い。
- 柿渋ありと無し
下2つはスクラッチ加工無しで柿渋なし。
上のは柿渋を塗っては扇風機で乾かしを5回程度連続っ繰り返したもの。少し茶色い。
柿渋を塗った割には起毛の感触はプエブロの感じと似たままを保ち、変化なし。羊スエードは感触がダメになったのに。
- 色移りの確認
柿渋5回塗りをティッシュで強くこすってみる
色止め効果無し。起毛が取れてティッシュに着いていることもあるだろうが、使えない。
- スクラッチあり柿渋ありの防水効果確認
水滴を垂らしてみる
お、弾いた感じ。染みはどうかな?
- 水染み確認
染みています。スクラッチ加工の柿渋は防水効果なし。
- 真鍮ブラシでこすって色移り確認
削りカスが色移りにどれくらい影響するか確認する。ブラシで再起毛し、そのままティッシュ
弱くこすっても色移りしまくる。削りカスが移っている。
起毛させたあとに染色する方がそれっぽくなる。
結論として、起毛革に柿渋を塗っても色止め・防水効果はない。
スクラッチ加工なし柿渋染め革の色止め・防水効果の実験
ヌメ革にスピランの赤色で染色後、2倍以上に水で希釈した柿渋を塗り、扇風機で乾かす。という作業を連続で2回行った。天日干しなどはしていない。
柿渋に色止め防水効果があるかを確かめる。
- 強くティッシュでこすってみる
素晴らしい。結構強くやっても全く色移りしない。しかも革の風合いは限りなく生。
こすったせいか、少し艶が出たが、レザーコート艶消しぐらいかな。あまり吟面に樹脂を塗りたくない場合は、柿渋は使える。
- 柿渋の防水効果の確認
続けて防水効果をみる。吟面に水滴を垂らし、1分ほど放置
染みておらず、水滴を保っている。
- ティッシュで拭いて染み確認
染みていない。シミがない。防水効果あり。ナイスです。👍
- 結論
染色したヌメ革に2倍希釈の柿渋を2回塗っただけで色止め・防水効果あり。
直射日光や雨のあたる屋外の木材等に柿渋を塗る場合は、数ヶ月で塗り替える必要があるようです。基本的に屋内向けかな。
柿渋染めの財布をお尻のポケットに入れて使うような場合、服と革が擦れて皮膜が薄れ効果も落ちるかとは思うが、そうした使い方をしなければ柿渋染めで色止め防水をするのはアリかなと思う。
生成りに柿渋だと焦げ茶まで経年変化するけど、染色後の柿渋染めはどんな風に変化するんだろうか。上の実験で使った革の経過はまた後日。いや、後月。
以上