chayarokurokuroの雑記ブログ

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【レザークラフト】二つ折り財布を作った

二つ折り財布を作りましたのでメモしておきます。一丁前に作成依頼を受けました。



二つ折り財布は今回で4個目の作成です。初めて牛革の半裁を買った1年10か月ほど前に、YouTubeでどなたかの無料公開された型紙で作ったのが1個目。写真無し。

2個目は一年前に型紙から作ったもので、後で画像をアップします。
3個目は現在使用中のもので、日本の川久保玲さんのブランドであるコム・デ・ギャルソンの財布を適当にパクったもの。写真は無し。

で今回は、私がレザークラフトをしていることを知った知り合いが過去の作品を見て「ちょうど財布を買い換えようかと思っていた」と。「二つ折り財布で予算○○円まで」という雑な内容の依頼で型紙から作りました。素人に商品開発させるとかだいぶん無茶よね…



依頼のきっかけになった作品

2個目に作った二つ折り財布を見て依頼下さった。その財布の写真をアップする。
売るつもりで1年ほど前に作ったが、色々失敗しておりしばらく自分で使っていた。現在は補欠でお休み中。

姫路のタンナー製のドラムタンニン鞣し牛革。SEIWAのスピランで染めている。青色と空色を布でグラデーション染め。

スピラン(アルコール染料)は水性染料より綺麗にグラデーションで染めるのが難しい。重ね塗りする時に先に染めた色が退く?顔料っぽい?一癖ある。

だがスピランのメリットとして感じるのは、水性染料より革の繊維が締まる?のか、銀面が高級感のある感じになる。 あと水性染料に比べて退色しにくい。ほとんど色褪せしない。
他のアルコール染料が似た特徴かどうかは使ったことがないので分からない。

ってことは逆に、「茶芯」のような黒が色褪せて茶色く退色するエイジングを狙いたい場合は、水性染料を使った方が良いってことですね。



スピランの茶色をアルコールで薄めて染めている。
茶色は原液のまま染めると赤茶けた色でめっちゃカッコいい。薄めるとキャメル色でこれまためっちゃカッコいい。
これは薄めてはいるが、ちょっと濃いめ。



ボックスタイプのコインケース。革の厚みと設計を上手くやっておかないと、蓋を閉じててもコインが飛び出したりする。
マチは漉きまくって結構薄くしている。できれば揉んで柔らかくしておいた方が使いやすくなるかなと。



札入れの裏地にレーヨンシャンタンをベタ貼り。縫い代に被りつつコバより内側に貼らないと、顔料系コバ処理剤が必要になる。布地の層を隠蔽する必要。

しかしここで大きな失敗をした。ベタ貼りのボンドに酢酸ビニル系(サイビノール、白ボンド、木工用ボンドなど)を使ってしまった。ベタ貼りのせいで裏地布がつっぱるのと、ボンドが硬化して硬いのとでガチガチの財布に…

ボンド選びと裏地の貼り方の教訓になった。

ハンドメイドのレザークラフトは大概は裏地を貼らないことが多い。裏地に布や革を貼ると圧倒的に作業行程が増える。かなり面倒くさい上に材料代もかさむ。厚みが増すのでそのぶん革を漉く必要がある。手作業での革漉きは地獄である。



今回作った財布

上の二つ折り財布のような感じで、コインケースは上向き、という依頼内容。
まず方眼紙で型紙を作りながら、合皮で試作品を作って改良を重ねた。ある程度良さそうなのが出来た所で作業を本革に移した。




栃木レザーの牛ヌメ革を使用。革の厚みは1.0ミリに漉いてもらっている。スピランの茶色をアルコールで薄めて布で手染めしている。

染色後にすぐ、「米油」「ニーツフット油」「SEIWAネオパールN」「柿渋」「水」 を混ぜたものを塗った。このレシピは全く自己流。
オパールは染料を浸透させる目的の非イオン性界面活性剤で、水と油を混ざりやすくする。自作の加脂剤の原料として使えるかなと。油の塗り過ぎ予防になる。
柿渋は革を強くするのとオレンジ色系のエイジングが目的で混ぜている。
米油は匂いもなく酸化しにくい油なので試しに実験中。悪くないかも。

これを1~2時間ほど扇風機に当て、だいたい乾いたかなって所で「クラフト社レザーコートつや消し」を刷毛で2度塗り。
トドメに「蜜蝋」「カルナバ蝋」「ニーツフット油」を質量比1:1:5で混ぜたワックスを柔らかい布で塗り、銀面を合わせるように曲げながら革を揉んだ。



糸はビニモMBTの太さ5番、色は106番ライトベージュ。
ピッチは4ミリ、平たく研いだ菱ギリで穴開けした。

コバ処理はスピラン茶色で染めて「クラフト社レザーコート ハイグロス」を塗っている。コバ処理用の製品ではないだろうが、表面張力があり目止めの役目を果たしてくれる。塗るだけでキレイになるし、布で磨いてもいい。
数ヶ月間実験してみて、ひび割れや剥がれが起きていないので使っているが、自己流なのでオススメはしない。



お札の出し入れがしやすいようにコインケースの右側の部分は縫わず、開くようにした。



床面が見えないよう、両銀面仕様。外側の革は0.8ミリの二枚重ね。真ん中の仕切りは0.5ミリの二枚重ね。カード・コイン裏の革は0.8ミリで銀面を札入れ側に向けて1枚。
漉き作業は丸刃の革包丁と別たち。破らないように慎重に何十時間も地味な作業、レッツ腱鞘炎! マジ地獄。



コインケースの裏地は無し。マチは0.7ミリぐらいに漉き、柔らかくするために揉んでおいた。他は1.0ミリのまま。
マチを分割式にして縫い合わせるとコインケースが開き難い。曲げる構造だと外側に開こうとするテンションが最初から掛かるので開きやすくなる。マチを縫う手間も省ける。パーツ数も減るので結構メリットがある。



さいごに

この手の形状のオーソドックスな二つ折り財布はカード入れが少なく、機能性に劣る。ノートのように開ける両面カード段を見開きの真ん中に付けるとか、コインケース裏にカード段を付けるとか、札入れにカードポケットを付けるなどで収納枚数を稼ぐ構造にするとか色々手はある。しかしコンパクトかつ多機能を実現するにはそれなりの技術と手間と材料代がいる。確実に長財布の方が作るのは楽かなと。漉き地獄が見えてますし。

現在使っているコム・デ・ギャルソンのをパクった二つ折り財布はコインケースが外側についており、折り曲げた時にスッキリして型崩れもしない。カード段も見開きで左右についているので収納枚数も多くできる。がま口が付いた二つ折り財布みたいなのがありますが、コンパクトで多機能で可愛らしいものもおおく、自分で二つ折り財布を買うとすればそういうやつかな。

てか、革漉きをどうにかしたい…