chayarokurokuroの雑記ブログ

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【レザークラフト】安いヨーロッパ目打ち他、レビュー

またレザークラフトの投稿でスンマソン。道具を買い足しましたので忘れないうちにレビュー。



前置き

通常、布地を手縫いするときは針を糸の片方にのみ付け、もう片方は玉止め(でしたっけ?)で糸がスッポヌケないようにして波縫いなどします。レザークラフトの場合は針を糸の両端に付け、ストロベリーダンスの手の動きのように上下の糸が毎回交差して入れ替わるように縫って行きます。

その際、革は丈夫で針を刺しても貫通できませんので、前もって金属製の工具で縫い穴を開けておきます。
千枚通しや丸ぎり、菱ぎり、ポンチ等でひと穴ずつ開けて行く方法、フォークに似た工具で一気に数個ずつ穴を開ける方法などあります。
また穴の形状により縫い目の形も変わりますし、縫い方によっても様々。



フランスの高級ブランド、エルメスのバッグの縫い目を見てみます。画像はネット上のものを勝手に拝借。ありがとうございますた。

おっと、間違えた。これは自作したワックスの実験台。150万円ぐらいで売れるやろか?

これはバーキンという名前のトートバッグです。単なる牛革製のバッグですが自動車や大型バイクが新車で買える値段がつけられている。最近また値上げしたようでサイズがいくつかありますけど約190万円ほどします。アタオカ…。

金具の上、前面の口を横向きにステッチが入っています。表側と裏側の革を縫い止めている。糸は右上がり //// になっています。ここはミシン縫いです。
一方、持ち手の付け根のステッチは \\\\ と左上がりになっている。これは手縫いした部分。

ミシン縫いでも手縫いでも表側になる目立つ面から針を刺す。穴を開ける。ミシンの構造や針の形状、穴の形状で右上がりか左上がりかに分かれますが、通常はこのようになる。



手縫いにおいて、このエルメスのステッチのような斜めが強調された縫い目にするには、右上がり45度ぐらいの細長い穴を開ける必要があります。そうすると左上がりの \\\\ 縫い目になる。



これを実現する最も安上がりな方法としては、菱ギリ(を加工したもの)を使い適切な角度で穴開けする。またはフレンチオウルやフラットオウルと呼ばれる彫刻刀の平刀の細いようなものを使う。

だがしかし、穴を1つ1つ開けて行くので大変です。そこで、日本では「ヨーロッパ目打ち」と呼ばれる工具を使うと効率的にできる。海外では「stitching chisel french style(フランス式のステッチチゼル(ノミ))」とか「pricking iron french style(フランス式の穴を開ける鉄)」とか呼んでいるもの。

ちなみに日本の「菱目打ち」は「pricking iron japanese style」です。菱目打ちは刃先が尖っているためステッチガイド線に合わせやすく作業効率がよく、大きな穴が開くためアメリカンスタイルな太い糸を使うような場合にも便利で、好んで使われているようです。
ピッチによるがヨーロッパ目打ちよりゆるかやな角度の穴が開くので、ステッチは極端な斜めにはなりません。



安いヨーロッパ目打ちのレビュー

長い前置きでした、ここからは入手した道具のレビューです。

今回購入いたしましたのは、レザークラフト業界に何の貢献もしていなさそうな某インターネット通販サイトで売っている格安のヨーロッパ目打ちです。
アクティブなんちゃらという中国のメーカー製で、材質はなんと、ハイス鋼。ハイ・スピード鋼の略。ステンレス板に穴を開けるドリルビットの刃先などに付いている金属です。とても高価なので刃先のみ。非常に硬く高速回転にも耐えうる、金属を削る為の金属。硬いので刃物に加工するのも大変らしい。

穴が細くピッチの狂いが目立つゆえに、CNC加工機など精密機械部品を作るときに使うような機器でドンピシャで作るのが主流のようです。ヨーロッパ目打ちが高くなるのは仕方ないかなと。

上の写真を見て分かるように、長さが9センチほど。小さい。オモチャみたい。現物見てビックリした。材料の使用量を少しでも減らさないと安く出来んわね。一般的な高級ヨーロッパ目打ちの7分の1ほどの価格。



菱目打ちと並べてみた。小さい。
梱包は段ボール製の紙袋の中に、何のクッション材も無くビニール袋に入れてあるだけだった。



角は全て面取りしてあり、素手で触ってもケガしない。表面は1000番ぐらいのヤスリで磨かれている。上等上等。



床革の二枚重ねで厚さ3ミリを菱目打ちを打つのと同じ方法で行った。貫通力はある。10本目でも弱い力でめっちゃ刺さる。



簡単な貫通。楽チン。



ヨーロッパ目打ちはステッチラインに合わせにくいと言われるが、思ったほどでもなかった。穴の形状は縦長の菱型。ピッチは見た感じ正確。45度で1.8~2ミリの細い穴。思ったよりかなり良い。使い物にならないのが来るかと思っていたので。



ピンクの糸はベビーロック「極」8番(フジックス「職人 for leather」と同等品)。
青の糸はビニモMBTの5番。
左2本は比較のため、加工した3ミリピッチの菱目打ちで穴開けしている。



下の2本は3ミリピッチの菱目打ちです。
右下の二つの穴は、フラットに加工した菱ギリ。左は協進エルプロ菱ギリ(細)、右はSEIWA 菱ギリno.2。



いつ折れるかヒヤヒヤだが、意外に使えそう。あんまり褒めるとアレなんで、このぐらいにしとこう。



【追記】
一週間ほど使ってみた感想。細い縫い穴が開くので目立たなくて良いのだが、針と糸が当たり前に通り難い。クラフト社の極細針でも縫いにくかったりするので、菱ギリで縫い穴を広げならがら縫うのは必須。高級ヨーロッパ目打ちでも状況は変わらないと思う。
それから、辻褄合わせが菱目打ちより難しい。繊細なピッチコントロールで合わせて行かないと粗が非常に目立つ。
全体的には、ヨーロッパ目打ちらしさを活かす為に色んな事に神経使わねばならず、かなり慣れないと作業効率が大幅に落ちるかも。ただし腕は上がる。たぶん。
【追記おわり】



その他レビュー

目打ちとは別に、革販売店で買ったものもついでに。

実は今までトコノールを使ったことがなかった。SEIWAの製造元を川村レザーの本体である川村通商が購入とのことで、引き続き製造販売されているようです。トコノール以外の製品に関しても現在吟味中と川村通商公式WebのPDFファイルにあった。バチックやスピランの行方や如何に…。

トコノールはカルナバ蝋の匂いですね。女子の部屋の匂い。化粧品の香り。原材料の天然蝋はこれだ。艶のもと。

針も買ってみた。クラフト社の丸針(太)。実は今までDAISOのレザークラフトコーナーで売っているものを使っていた。なかなか折れるものではないので。
クラフト社のはそれより少し長い。少し太い。針穴に糸を通し易い。買って正解。使いやすい。ミシン糸の1番も通る。ナイスです。



おわりに

YouTubeやらでエレガントなステッチを極めんとヨーロッパ目打ちを使っている国内外のレザークラフターたちは、まず縫い方が上手い。均一なテンションで均一な方向に糸を引かないと、ヨーロッパ目打ちを使ったからと言って「はい、直ぐさまエレガントステッチよ」とはならない。なのでステッチングホースを使うよう推奨されていたりする。

また、糸にも拘っていて、リネン糸など硬めのを使ってある場合が多い印象。縫い終わりにハンマーで叩いた後も糸が潰れず立体的に革に埋まる方がエレガントに見える。(糸の太さが均一に見える為。)
五助屋レザーさんが販売し推してるユーフェンのポリブレイドは使ってみたいが、組み紐タイプでコスパがちょっと…。六花やMeisiに安めの組紐タイプがあるが、叩いて潰れないほどコシがあるかどうか。

エルメスはリネン糸を使っている。化繊に比べて耐久性が劣るものをなぜ使うのかと思うが、フランスはリネン生産が世界一とかで、農業国としての国内農家の支援も兼ねているのかなと。伝統やリネン糸の見た目もあるだろうけど。しかし素人の下手くそが切れやすい糸を使ったりすれば…。ちょっとリネン糸は躊躇する。

糸にコシを出せばいいのなら、コスパ的にビニモMBTを硬くすれば良いんじゃね?と思って、ウレタン樹脂に漬けたあと温めたワックスにどぶ付けにしたり色んな実験をしている。見た目が近い感じにはなる気がする。
ポリエステル100%のコア糸でインボンドで硬めの樹脂コーティングした製品とか無いじゃろか。