chayarokurokuroの雑記ブログ

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【レザークラフト】栃木レザーと昭南皮革のヌメ革を買った感想

初めて牛革の半裁を購入して早1年半ほど経ちました。初めは某アジア国のコンビ鞣しタンロー、その後は姫路のドラム鞣しのタンニン生成り革を数枚、そしてようやくピット鞣しの本ヌメ革(栃木と昭南)デビューです。(*´・ω・`)b

栃木レザーは栃木レザー株式会社製の牛革で、ピット槽にて植物タンニンで鞣してあります。ブランド化して盛んにアピールされていますのでご存知の方は多いかと思います。栃木レザーとひとえに言いましても仕上げの種類がたくさんあり、銘柄によって厚みや柔らかさや見た目がだいぶん違いますが、今回購入したのは表面処理など何もされていない、原厚が2.5~3.0ミリほどのスッピンのヌメ革です。

もうひとつは、兵庫県姫路の昭南皮革工業所製の牛革。同じくピット槽で鞣された植物タンニン革です。革好きな人なら知っているかも知れませんが「昭南レザー」と呼ばれているもの。ここの製品に原厚が4.5~5ミリほどの厚手のヌメ革で「昭南ベンズ」という商品名の革があります。 ※ (ベンズとは背中の部位のこと。最も繊維密度が高い上等な部分で、昭南ベンズは背中からお尻の部位だけを切り出した高級製品。ベルトやバッグ、男性用の財布、靴底等でよく使用されている。)

今回購入したのは昭南ベンズを切り出す際にカットしたベリー(腹部)の革です。昭南ベンズの申し子です。グレージング(磨き)はされていません。


使用の感想

ファーストインプレッション 匂い

まずドラム鞣しのタンニン革と明らかに違うのは、匂い。ドラム鞣しは数日間だけタンニンで鞣すのに対し、ピット鞣しは約1ヶ月(~数ヶ月)タンニン鞣し剤に浸っているからか、木材的な香り?がかなり強い。モロに革の匂い。
レザークラフトを始めてから、革に何の油が使われているか知りたくて革専門店などに行っては色々嗅いでおります。イタリアのバダラッシカルロ社のミネルバボックスって革がありますが、魚油系?の匂いが強いなと。栃木レザーも伝統的に魚油を使うとか。匂いは精製済みのため無いという。あと良い香りのする植物油をブレンドしているようです。昭南レザーは企業秘密みたい。両製品共に特徴的な油の匂いはこれといって感じられない。

切ってみた違い

「ヌメ革」というだけあって「ヌメっ」とした感触。繊維密度の高さや油脂の具合の違いから来るものだろうか?
切り口も刃を入れただけなのに既に艶が出ていて凄い。

漉いてみた違い

昭南(ベリー部位)と栃木(足の部位)を漉いてみて「これ本当にベリー?(足?)」というほど繊維密度が高い。床革の触り心地が凄くいい。今まで使って来たものとかなり違う。黙ってたらベリーだとは分からんぞ。職人だけが味わえるピットヌメの良さかな。

経年変化の違い

栃木レザーにはニーツフットオイルを軽く塗り、直射日光の当たる所に1時間放置した。紅茶ぐらいの濃い茶色になった。たったの1時間でこれですかと。濃いめの柿渋を塗って1日放置してもここまで変わらない。
昭南レザーの方は、スマホポーチのようなバッグを作って直射日光の当たらない所に置いて観察。マチをドラムタンニン革で作ったが、経年変化の仕方に差が出た。ピット鞣しの方がやはり早く、パーツごとに色味の違いが …。混ぜるとバレる(笑)。

見た目の違い

昭南レザーの方は厚みが4.5ミリほどあるのでピット槽に浸かっている時間も通常より長いと思いますけど、そのせいか厚みのせいか分からないが表面が素晴らしくキレイ。ベリーでこれですか、と。言われないとベリーだと分からない。言われても分からない。
昭南ベンズはトラッカーズウォレットなんかに良く使ってありますが、ネット上の写真でも表面に張りがあって凄く綺麗なんですよね。職人さんたちが「この革に惚れて使い続けてる」とおっしゃるのが理解できる。昭南の「本ヌメ革」ではなく、わざわざ価格の高い「昭南ベンズ」を漉いて使う理由がここにある。

栃木レザーの方は原厚2.5~3.0ミリほどの物で、今まで使っていたドラムタンニンと同じくらいですが、見比べてみて明らかな違いは感じられない。厚手のサドルレザーとかになるとまた違うんだろうとは思います。
ただ漉きを入れて床革の密度からして違うので銀面の密度も高いはずで、強度や耐久性が高いだろう。色ツヤ以外の所の経年変化の仕方に差が出ると思う。

染色具合の違い

コードバンは色を綺麗に入れるのが難しいと姫路の某タンナーのユーモラスな社長さんがYouTubeでおっしゃっていたが、牛革のピットヌメとドラムヌメの色の入り具合に違いは感じられなかった(SEIWAのスピランを使用)。
エイジングが早いので、使用するオイルの種類に関してドラムヌメ以上に気を払う必要がある。また色止めやコーティング剤をどうするか。ヌメ革に合成樹脂のチープな艶は避けたいと思っていますが、高級な本ヌメ革なら尚更。なるべく素材を活かしたい。



初めての本ヌメ革の印象はこんなとこで。

レザークラフトツールのサプライヤーであるSEIWAが10月末に廃業された。コロナ茶番劇による世界的な販売の落ち込みに対応が間に合わず、という。負債はたったの1億円。全世界のレザークラフターの動画に最も頻繁に登場する日本製品の代表であるトコノールを販売する企業が、このまま引き下がって良いのか?ローパスバチックやスピランを愛用してきた者として、何とか一部だけでも復活を願います。